変異“株”とは?
最近、テレビやネットニュースで新型コロナウイルス(COVID-19)の変異について取り上げられているのをよく耳にするようになったのではないでしょうか?
また、変異種ではなく、変異“株”(へんいかぶ)という言葉が用いられています。そもそも変異株とは何なのでしょうか?
変異株と変異種の違い
変異と言われるので、ウイルスに何かの変化が起こってきているのは、皆さんも言葉の意味から想像する事ができると思います。
新型コロナウイルスはRNAウイルスと言われ、一本の遺伝子情報の入ったゲノムというものを持ちます。一般的にRNAウイルスは1回感染するとゲノムの1~2か所ほど変化すると言われるほど変異しやすい特徴があります。
図:新型コロナウイルスの基本的構造 (参考:新型コロナウイルスに対する基礎知識を身につけよう⑤)
その遺伝子情報の変化により、一部のウイルスの変化があっても基本的なウイルスの特徴は変化していない場合に、「変異株」と言います。ウイルスのバリエーションが増えたということであり、ウイルスの名前は変わりません。
一方で、違う種類の生物の遺伝情報が混ざり、2種の生物の特徴を持った新しい生物が誕生することがあります。この変化は「変異種」と言い、新しい名前が付けられます。
今回、数多くのメディアで放送されているのは「変異株」であり、感染拡大の中でウイルスの特徴が変化したものが広まっているということです。
変異株 | 変異種 |
基本的特性はほとんど引き継がれ、同じウイルスの複製バリエーションであり、同一ウイルスである。変異ウイルスとも言われる。 | 2つの生物種の特徴を併せ持った新しい生物種が誕生すること |
(参考:一般社団法人 日本感染症学会)
変異株が恐れられている理由
現在、話題になっているのは、アフリカ型の新型コロナウイルスの変異株です。新型コロナウイルスはタンパク質でできた突起部分が人にある受容体(ACE2)とくっつくことで感染します。ワクチンはこの受容体に働きかけるのですが、アフリカ型の新型コロナウイルスはウイルスの突起部分に変異が大きいため、ワクチンの効果が低下する可能性が示唆されています。
また、イギリス型の新型コロナウイルスの変異株についても、感染力が高い可能性があるという報告から警戒されています。
さいごに
変異株の特徴が明らかになっていない以上、ワクチンを打ったとしても、これまでの手洗いうがい、マスクの着用などの生活はまだ続ける必要がありそうですね。
作業療法士 坂本
参考文献
・増田道明.「新型コロナウイルスのウイルス学的特徴」モダンメディア 66巻11号(2020)
・一般社団法人 日本感染症学会
・Kana A. Swanson, et al. Neutralizing Activity of BNT162b2-Elicited Serum — Preliminary Report. New England Journal of Medicine(2021)