看護師 座談会

看護師 烏野

看護師 坂井

看護師 岸上


訪問看護を選んだきっかけ

岸上:私は回復期病棟にいた期間が長かったんですが、退院前カンファレンスに入ったあと、「在宅でこうしたい」「こうできたら」という思いがずっとあってモヤモヤしてたんです。でも、在宅看護は敷居が高いし、ひとりで訪問することへのプレッシャーも強くて。周りからは全科回ってからじゃないと厳しいと聞いていたので、気になる止まりでした。そのうちサービス残業が増えてきて、こどもがまだ小さいということもあって退職を決めたときに、これはきっかけだ!と思って在宅に飛びこみました。

坂井:僕は何年も看護師やってきて、いろいろな病院や科を回ったんですけど、物足りなくなってきたんです。もはや給与のために看護師しているような感じで、年次が上がって降りかかる責任をこなしていたんです。そのうち、こういうことのために看護師しているんじゃないと思えてきて、もっとおもしろいものないかなと探してました。

烏野:おもしろさ?

坂井:これまでは専門性の追求をしていたんですけど、もっと看護師としての世界を広げたいと思ったんです。転職先も、在宅はもちろんなんですが、一般企業も視野に入れていました。病院という組織の中にいるのがいやになってたんですかね(笑)

岸上:一般企業ってことは、看護師じゃない仕事を探してたってことですか?

坂井:看護師の資格を生かして、違う形で患者や地域にできることはないかなと考えていたんです。訪問看護は自分でアセスメントして展開しないといけないじゃないですか。看護師の基礎を改めて見つめることができるんじゃないかと思って、思い切って飛び込みました。

烏野:地域っていう点では私も似てます。以前勤めていたクリニックでは、退院後まだまだ不安だっていう声が多くて往診に行っていたんですが、実際往診では追いつかないので、その分を訪問看護で補ってもらってたんですよね。私も訪問看護したいとは考えてたんですが、看護師経験がまだ5年なので、訪問看護はめちゃくちゃ敷居が高かったですね。

坂井:自分のやったことが、即責任に結びつくもんね。

烏野:そう。そこが一番迷うところでした。でも、何年たってもはじめてははじめてやし。他の看護師さんとか医療機関との連携の仕方によっては自分でもなんとかできるんじゃないかな、と考えて思い切りました。

 

訪問看護はハードルが高いと思われがち

岸上:初めはどうしても、機械全部自分で動かさないといけないんじゃないか、とか思っちゃうし。何かあったらひとりでドクターに話ききにいかなあかんとかも負担に感じちゃいますよね。

坂井:病棟やったら詰所いってきけばいいけど、ひとりで対応すると考えると……。

烏野:実際の状況を知らんからこそ、はじめは不安だと思います。

岸上:実際入れば印象も変わるけどね。

坂井:やってみたらいいんですよ、本当に。

岸上:私、実は前職は訪看を立ち上げからしたんです。訪看経験ないのに(笑)。経験者から教えてもらえたら大丈夫だろうという気持ちで入ったら、まさかの管理者を任命されて。訪看経験はないしいきなり管理者だし、営業も月500件は回ったし、すごく大変でした。でも、立ち上げって医療的ケアが少ない利用者の訪問が多いんですよね。そうすると一人にじっくり関わることのできる楽しさが見えてきます。薬のケアとかフットケアとかしてるときに色々話を聞いて、関係性が作れるとぐっと信頼してくれる。看護師の醍醐味だなあって。

坂井:それは思います。

岸上:ほんとにね。これほど看護師冥利に尽きることはないな、と。私の場合、病棟ではひとりと関わる時間がなくて、感覚としてはルーティン作業だったんです。今は、1対1で利用者と関わることができているので、自分が本当にしたいケアに近づけていると思っています。

烏野:入るまでは不安だったことも、実際やってみるとそうでもなかったりしましたね。訪問に行くのはひとりでも、なにかあれば他の看護師に連絡したり、先生に電話したりできるから、自分から発信しさえすれば指示はもらえる環境ですし。そう思えると、病院じゃない楽しみも感じるし、勉強になる。病院の流れの中で覚えるよりも、自分で全部する!っていうのがあるから身につくんじゃないでしょうか。

岸上:相談できる人がいる環境、っていうのは大きいかもしれないですね。

烏野:利用者さん個人の身体のことで気になることがあれば、一緒に入ってる療法士さんに聞けますし。教科書じゃない、個人の身体の状態に合わせたことを教えてもらえて助かります。

 

病棟勤務と訪看勤務、環境の違い

岸上:とにかく汗はかく!(笑)

坂井:今までそんな経験なかったです(笑) 夏は涼しくて冬は暖かい、空調が整ってる環境でしか働いてこなかったので、最初は不安でしたよ。

岸上:病棟では年間を通して半袖でしたもんね。

烏野:そう考えると、人間らしくなったかもしれません(笑)

岸上:あ。顔の右側だけシミ増えた。そこはデメリットです。

烏野:あー。車乗ってると日差しが右から入ってきますもんね(笑)

岸上:あと、入浴介助は本当に自分が臭く感じます。

烏野:確かに、すごい汗かくから、自分の臭さが分かります。

岸上:夏はもちろん暑いんですけど、冬は暖房いれてくれるところもあるから、そういうとこはサウナ状態です(笑) デオドラントシートは必需品。

烏野:乾く前に吹かな!って焦りますよね。あと、替えの靴下も持ってます。

坂井:僕もです。靴脱いだときとか匂いも気になりますよね。

岸上:わたしはそんなに枚数持ってないけど、雨の日用で持ってますよ。

 

訪問看護ならではの初体験

岸上:家族さんとの関係とか?病院に比べるとすごく密接。

烏野:ずーっと横についてみてる家族さんとかもいてはるんですよねー。

岸上:ああ、無言のプレッシャーありますね。

烏野:しかも家族総出で。最初は緊張するけど慣れてきますね。

岸上:わたし、お子さんはいまだに緊張します。

烏野:お母さんってなるとね。目線が他より厳しいのは確かです。

岸上;お母さんの希望に沿うか、医療的意見を指摘して方針修正するか、どっちがいいか本当に悩む。

烏野:家によって十人十色というか、カラーが本当に違うんですよね。ただ、高齢の方よりも小児の方が家族の圧が強いです。同じ動けないでも、お子さんのほうが改善とか進歩を求められる。現状維持なのか結果をだすのかっていう希望の違いはあるんでしょうね。

岸上:もしかしたらこっちの思い込みかもしれないんですけど。そう思うから余計緊張しますよね。

 

病棟と在宅で視点の違い

岸上:病棟では、病院がルールを決めます。これしないと意味ない、とか。治療第一ですね。在宅はその人の生活なので、それをどう守り続けるかに焦点を合わせます。たとえば、どうしても煙草が吸いたいなら、吸っていい生活スタイルを考えるとか。

坂井:相手のテリトリーに入らないといけなくなりますよね。

岸上:在宅は制限ができないんですよね。その中で生活できるように工夫するしかない。

坂井:視点はだいぶ変わる。

烏野:本人の気持ち次第なので、禁止するのではなく、本人がそうしたいと思える方向に誘導したりする必要があるんですが、それが大変だと思います。長い目で、治療よりも生活を考える場面が多いです。

 

訪問看護の渉外

坂井:看護師としての働き方を広げたいと思って転職してきましたが、今やってる営業はすきですね。ケースと外回り半々くらいでスケジュールを組んでいるんですが、外回りも営業というよりは色々なところにしゃべりに行っている感じです。話しているときにも、他の営業とはちょっと違うなって言われたりするようにしていますね。ガツガツしないというか。

岸上:看護師の業務で営業ってなかなかないから、病棟にいるとそんな仕事があることにびっくりするよね。

坂井:僕もはじめてやったので、試行錯誤ですよ。夏とかは暑くて心折れるけど、営業先に行ってしまえば楽しいです。ここの担当者とはどんな話できるんかなあとか考えながら、面白いこと探しに行っているみたいな感じです。

烏野:場所によっても違いそうですね。

坂井:営業先によって地域性もありますよ。同じエリアでもカラーが全然違います。

岸上:実際やるってなると抵抗ありますわー(笑)

坂井:使命感だけだとしんどくなりますよね。無理がある。思いつめすぎず、必死にはならないようにしてます。

 

ワークライフバランス

烏野:訪問看護は家から家へ移動距離がかかるんですよね。ただ、スケジュールの組み方を工夫してくれているので、導線はいいし動きやすくはあります。私はこどもも大きいから手はかからないんですけど、転職してから晩御飯を家で作れるようになりました。こどもからも、「お母さん、晩御飯作れるようになったね」って言われて(笑) 家庭を顧みる母に近づけた気がします(笑) 場所によっては直帰もできますし。

岸上:直行直帰できるのは大きいですよね。事業所へ行くときよりも朝遅く家を出られたりとか。

烏野:朝の時間ってすごく貴重なんですよね。あと、急に休まないといけないってなったときに備えて、看護師みんな利用者さんと顔合わせしてますね。何かあったら来るかもしれないのでよろしく!って。情報共有もしているから、代行も頼みやすいです。

岸上:急ではないんですけど、こどもの行事とかも。医療ケアの関係で絶対にキャンセルできない利用者もいるので、代行を頼めるのはありがたいです。

坂井:僕も、休みのときのサポート体制は大丈夫だと感じています。さすがに男性禁止とかになると、僕が代行に行くことは難しかったりもするんですが。24時間対応(オンコール対応)をしている関係で利用者にも挨拶に行っているので、そのあたりは今回だけ、ということでお願いしたりです。自分が休みのときは調整したりでなるべく自分が行くようにはしているんですけどね。

岸上:オンコールもそんなに鳴らないんですよね。状態が悪い一時期だけ鳴ったりするくらいです。

烏野;その状態が長いっていう利用者が多いので、ご家族も慣れてらっしゃるんですよね。突発的なことがあったら鳴ったりもしますけど。

岸上:あと、これはだめなことだと思うんですが、オンコール携帯ではなく個人携帯にかかってきたりもします。

烏野:そうですね。高齢の方も多いので、何個も番号覚えてもらうのもご負担なんだろうなと思います。

 

最後にひとこと

岸上:訪問看護は、敷居は高いと思うんですが、やってみればそんなことないって思うことも多いと思います。特に、周りに経験者がいるといろいろ話もきけるし、同行訪問ができる環境は安心です。

坂井:訪問看護は、看護の基本というか。利用者に対しての姿勢であったり、自分の看護を見つめなおすことができるものだと感じています。あと、病院とはちがう働き方の幅があって、視野が広くなります。他職種連携っていう言葉も最近よくききますが、訪問看護は特に、それがダイレクトに感じられる環境です。連携してる!という実感がわきます。

烏野:自分の生活と利用者の生活と、トータルのバランスをとることのできる仕事なのかなと思います。人対人の仕事なので、自分の成長にも繋がるし、喜んでもらえているとか役に立ててる、と実感できます。


  

訪問看護への想い